「金利のある世界」を生きる、国債と社債で育む資産形成
2026/09/10
「金利のある世界」を生きる、国債と社債で育む資産形成
資産形成の見識を深める上で欠かせないのが、経済全体を動かす「金利の動き」に対する理解だ。
金利という名の潮目が、今静かに、しかし確実に変わり始めている。
長らく続いていたゼロ金利やマイナス金利という「凪」の時代が終わりを告げ、
マーケットには再び「金利のある世界」という風が吹き込み始めた。
世の中には個別銘柄の株式投資を得意とする人もいる。
だが、日経平均株価の採用企業だけでも225社。
その全ての業績や財務状況、将来の成長性を深く理解し追いつづけるのは容易ではない。
一方で、市場全体に連動させてバランスを取るインデックス投資や投資信託という選択肢もある。
けれど、「自分の目で確かめ、できる限り熟知し、
心から納得した上で資産を形成したい」性分である人間にとって、
株価の乱高下に日常を揺さぶられるのは、実は本意ではない。
そこで私自身が今改めて注目しているのが、金利の動向と連動する債券市場である。
定期預金より高い利率が見込め、個別株投資よりもリスクを抑えられるのが債券の魅力だ。
国や自治体、企業が資金調達のために発行し、定期的に利息が支払われ、
原則として満期(償還日)には額面金額が戻る。
株式のような激しい価格変動に晒されにくいため、ポートフォリオの土台を固める安定した選択肢と言える。
株価のように日々の変動を細かくチェックし続ける必要のある投資に対し、
金利の動向は基本的に、中央銀行(日銀)による利上げ・利下げなどの決定タイミングに凝縮される。
政策金利を決定する金融政策決定会合は年に8回。
この定期的なリズムの中で動く金利は、短期間の値動きに一喜一憂することなく、
経済の大きなうねりや市場の肌感覚をじっくりと学びながらお金と向き合える、
誠実な道標となるのだ。
この金利の動きをベースにした資産形成において、私が行き着いたひとつの答えが、
「個人向け国債(変動10年)」と「新窓販国債(5年・10年固定)」
という2つの国債を組み合わせるポートフォリオである。
両者の大きな違いは、元本保証の仕組みと金利の決定方法にある。
まず元本保証に関して、
個人向け国債は発行から1年が経過すれば国が額面で買い取ってくれるため、
途中で解約しても元本割れの心配がない。
一方、新窓販国債を途中で売却する場合は市場価格での取引となるため、
売却時の金利上昇によって元本割れが生じる可能性がある。
なお、売却益(キャピタルゲイン)が出た場合は申告分離課税の手続きが必要だ。
次に金利の決め方だ。
個人向け国債(変動10年)の金利は「基準金利(10年物国債利回り)×0.66」という計算式で設定されるため、
市場金利が上昇してもその影響は0.66倍にとどまる。
それに対し、新窓販国債の表面利率は市場金利に近い水準で直接設定される。
金利上昇局面が続くほど、この両者の利回り差は自然と広がっていくことになる。
したがって、金利が上昇へと向かうフェーズでの主役は、「個人向け国債(変動10年)」となる。
世の中の金利が上がるにつれて受取利息が半年ごとに追随して育っていくため、
上昇の波に乗っている間はこちらを多めに保有し、
時代の追い風をそのままインカムゲインへと還元させるのだ。
しかし、金利の上昇にもいつかピークが訪れる。
上がりきって天井を迎えたと見極めた瞬間、主役を「新窓販国債」の固定金利へとシフトする。
新窓販国債は市場の金利水準がダイレクトに反映されるため、
ピークのタイミングで高水準な固定利回りを捉えることが可能になる。
さらに新窓販国債の大きな魅力は、「市場で売却できる」という機動性だ。
金利がピークを打って低下へ向かう局面では、
市場金利が下がるほど、過去に高い利回りで発行された債券の価値(価格)は相対的に跳ね上がる。
つまり、手堅い利息収入を得るだけでなく、
状況に応じて市場で売却し、キャピタルゲインまで狙えるという、もうひとつの選択肢が手に入るのだ。
満期保有を前提としない場合、市場売却の機動性を活かすことで、
リスクを戦略的な機会に変えることができる。
もちろん売却に不安があれば、満期まで保有することで元本割れを回避できる。
さらに、社債投資にも目を向けてみたい。
一般的に債券投資には「信用・価格変動・為替変動・流動性」という4つのリスクが存在する。
個人向け社債は100万円単位からの購入が一般的でNISAの対象外(約20%の課税)という面はあるものの、「円建て・固定金利・満期保有」という条件を揃えれば、直面するリスクは「信用リスク(企業が期間内に破綻するかどうか)」にかなり絞り込まれる。
途中で売却しなければ価格変動も流動性リスクも関係なく、円建てであれば為替の影響も受けない。
日々の値動きに惑わされることなく、年8回の日銀の決定を軸に経済の呼吸を肌で感じつつ、
国債や社債を通じて自ら納得感を持って金利やマーケットと対話し、資産を育んでいく。
この手法はこれからの「金利のある世界」において、私自身の最適解にとどまらず、
堅実な資産形成を目指す生活者の皆さんに寄り添う真摯な道標となるのではないだろうか...。
そう確信を深める、実り始めの秋である。
<エッセイ Vol.11へ> <エッセイ Vol.13へ>
綴り手:鈴木ともみ
キャスター・エッセイスト

【プロフィール】
国士舘大学政経学部兼任講師、経済学修士、
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、
国際金融情報番組『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・STOCKVOICE)キャスター。
『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE)キャスター。
マイナビ「鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説」、日経電子版、
日経QUICK等に経済コラムを連載。
地上波初の株式市況中継TV番組でキャスターを務めるほか、TOKYO-FM、
ラジオNIKKEIなどラジオ番組にも出演。
JazzEMPアンバサダー・メインMC。
総合芸術舞台『一粒萬倍 A SEED』アンバサダー・語り役。
パーソナルカラリスト。
☆ エッセイ【吉日のおかわり(五感で潤すオフ活のススメ)】
主な著書
『株式投資・新NISA 損をしない投資に大切な基本100』(アルソス刊)
『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)
『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)
----------------------------------------------------------------------
FP Avenue
〒
338-0001
埼玉県さいたま市中央区上落合2-3-2Mio新都心
電話番号 :
048-851-5230
----------------------------------------------------------------------