「本能寺の変」信長と、55歳からのサイドFIRE
2026/07/25
【マイライフ~人生観とライフデザインの交差点~】Vol.8
「本能寺の変」信長と、55歳からのサイドFIRE
大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK)で、小栗旬さんが熱演した織田信長。
天下統一を目前にしながらも重臣・明智光秀に討たれた「本能寺の変」の描写の中で、深く印象に残る台詞があった。
「もうよいか、疲れたわ…」
それは、孤高の戦国武将の、文字通り疲れ切った本音だった。
仮にあの場を生き延びたとして、その先に一体何があるのか。
世の怨嗟に囲まれ、常に身の危険と背中合わせで怯えながら生きていく道は、あまりにも過酷だ。
信長は50歳を目前にした49歳でその生涯を閉じた。
これを現代にそのまま当てはめることはできないが、20代から四半世紀以上、フルタイムで全力疾走を続けてきた50代の手前で、信長のように「もうよいか、疲れたわ…」と心の中で吐露したくなる人は決して少なくないはずだ。
ましてや、正式な年金受給資格を得られる65歳を定年として見据えれば、65歳になるまでこの強度を保ったまま走り続けなければならない...そう考えると、あまりの道のりの長さに気が遠くなるという声も聞こえてくる。
40代前半くらいまでは気力も体力も充実しており、「このままいける」と感じていた人でも、50歳の大台が近づくと心身の変化に直面する。
さらに、コロナ禍を経て定着したリモートワークは、皮肉にも「通勤地獄や長時間のフル勤務に耐える日々」への違和感を浮き彫りにした。
身体を酷使する日々に健康面の不安がよぎる中、近年、経済的自立と早期退職を目指す「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」への関心が高まったのは、ごく自然な流れと言える。
しかし、完全なリタイアであるフルFIREを達成するために必要とされる「年間支出の25倍の資産(1億円〜2億円規模)」という高い壁は、現実的にはそう容易に越えられるものではない。
そこで、現代の現実的な選択肢として浮上するのが、資産運用益を生活の土台としつつ、不足分を副業やフリーランスなどの労働収入で補う「サイドFIRE」というライフデザインだ。
これならば、必要な資産額のハードルはぐっと下がる。
完全に仕事を辞めて社会との繋がりを断つのではなく、「好きな仕事を、自由なタイムマネジメントのもとで続けたい」という人にとって、理想的な余白を生み出してくれる。
50代以降の激務は、突然の体調不良による離職や将来的な医療費の増大といったリスクを孕む。
しかし、自らコントロールできる「自由と余裕」を持った働き方にシフトできれば、心身の健康は維持され、現役としての役割を果たし続けやすくなる。
結果として70歳近くまで個人の「勤労寿命」が伸び、社会の支え手として日本経済へ貢献し続けることにも繋がるだろう。
「65歳まであと15年」と言われると息が詰まる人も、10年前倒しした「55歳でのサイドFIRE」を目標に設定し直せば、「そこまでなら、もう一踏ん張り頑張ってみよう」と前を向けるのではないだろうか。
働くことそのものを放棄したいわけではない。
「選べる働き方」で余白とともに過ごしていきたい。
自分の余白、家族や友人との時間など、人生の愛おしいひとときを、気力や体力がみなぎるうちに、大切に丁寧に紡いでいきたい。
そんな大人たちの切実な理想形を、「55歳サイドFIRE」というしなやかなライフデザインが叶えてくれるのではないだろうか。
ファイナンシャル・プランナー(FP)として、また言葉やメッセージの伝え手として、この「55歳サイドFIRE」というしなやかなライフデザインが、これからの時代を生きる誰かのもとに心地よい道標として届くことを、切に願っている。
また同時に、「自由と安心」は共存できるのか、それともトレード・オフなのか…。
その問いに対する最適解を探り続けていかねば…と思う今日この頃である。
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綴り手:鈴木ともみ
キャスター・エッセイスト

【プロフィール】
国士舘大学政経学部兼任講師、経済学修士、
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、
国際金融情報番組『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・STOCKVOICE)キャスター。
『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE)キャスター。
マイナビ「鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説」、日経電子版、
日経QUICK等に経済コラムを連載。
地上波初の株式市況中継TV番組でキャスターを務めるほか、TOKYO-FM、
ラジオNIKKEIなどラジオ番組にも出演。
JazzEMPアンバサダー・メインMC。
総合芸術舞台『一粒萬倍 A SEED』アンバサダー・語り役。
パーソナルカラリスト。
☆ エッセイ【吉日のおかわり(五感で潤すオフ活のススメ)】
主な著書
『株式投資・新NISA 損をしない投資に大切な基本100』(アルソス刊)
『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)
『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)
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