注目ドラマが描くFIREと、55歳からのライフデザイン・サイドFIRE
2026/07/25
【マイライフ~人生観とライフデザインの交差点】Vol.7
注目ドラマが描くFIREと、55歳からのライフデザイン・サイドFIRE
全国的に夏休みの季節を迎え、新しく始まった夏ドラマ『君の好きは無敵』(TBS)も、私の毎週の楽しみのひとつになっている。
主人公の女性は、超大手経営コンサルティング会社の第一線でバリバリと活躍する有能なコンサルタント。
ところが、ある日突然「FIRE(早期リタイア)します!」と宣言し、颯爽と退職してしまう。
悠々自適な暮らしを満喫するかと思いきや、実際のところはそこまで生活に余裕があるわけではなく、気まぐれに隙間バイトをして暮らす日々…というところから物語は始まった。
この冒頭の場面を見て、「これは完全なFIREではなく、サイドFIREだ」と気づいた人もいたことだろう。
FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、文字通り「経済的自立と早期退職」を意味する。
これに対し、サイドFIREとは、資産運用による収入を基盤としつつ、生活費の不足分を副業やフリーランスなどの労働収入で補いながら暮らすライフスタイルを指す。
完全に仕事を辞めてしまう「フルFIRE」とは異なり、必要な分だけ、自分の意思で働く点が特徴だ。
資産運用益で生活の土台を賄い、残りを短時間労働で補う。
この自由度の高い働き方と余白のある暮らしは、「好きな仕事を自由なタイムマネジメントのもとで続けたい」と願う人にとって、ひとつの理想的なライフスタイルといえる。
フルリタイアは難しくても、サイドFIREなら手が届きそうだと感じる人も多いのではないだろうか。
サイドFIREの大きな利点は、一般的なフルFIREで必要とされる「年間支出の25倍の資産」よりも、少ない資金でスタートできる点にある。
特に子どもがいない共働きの二人世帯の場合、単身世帯や子育て世帯に比べて資金が貯まるスピードが早く、サイドFIREを実現できる可能性は高くなる。
一方、世間でのFIREへの関心が高まるにつれ、懸念されるのが現役世代の「完全なリタイア」がもたらす労働力不足だ。
これが拡大すれば、日本経済の縮小や新たな社会課題を生み出しかねない。
ならば、こんなライフデザインを描いてみてはどうだろうか。
通常の年金受給の開始時期である65歳から10年前倒しして目標を設定する、「55歳からのサイドFIRE」である。
現役世代の完全リタイアは労働市場から人を消してしまうが、サイドFIREであれば「週3日だけ、午後だけ」といった形で労働力としても社会と関わり続けることになる。
特に50代半ばまで前線でキャリアを積んできた層は、高度なスキルや経験、人脈を持っている場合が多い。
過酷なフルタイム労働からは退きつつも、週に数日、その知見を社会に還元してくれることは、人手不足に悩む日本の経済基盤にとってプラスになるはずだ。
また、働く側である個人にとって、フルタイムの激務による過度なストレスや疲労は、50代以降の健康リスクを高め、突然の離職や将来的な医療費の増大につながることがある。
これを、自分でコントロールできる「自由と余裕」を持った働き方にシフトできれば、心身の健康が維持されやすくなるのではないだろうか。
結果として70歳近くまで長く現役でいられるような状況が生まれれば、「勤労寿命」が伸び、社会全体の支え手であり続ける期間を長くすることにも繋がる。
55歳まで厚生年金に加入していれば、将来の具体的な年金受給額もイメージしやすい。
仮に、55歳で完全に現役を退く場合、そこからの生活費はすべて貯蓄の切り崩しとなり、将来的な公的年金への依存度やリスクが高まってしまう。
だが、サイドFIREによって一定の労働収入を得ながら資産を少しずつ取り崩す形をとれば、資産寿命が尽きるリスクは減少する。
10年前倒しした55歳という節目で自立した基盤を持ち、健康的に、自らの意思で心地よく働き続けるライフデザイン。
それは個人にとっての幸福な人生のひとつの形になるのと同時に、国家の経済にも貢献できるという、これからの時代を生き抜くための新たな人生観であり、有意義なライフデザインになるのではないだろうか。
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綴り手:鈴木ともみ
キャスター・エッセイスト

【プロフィール】
国士舘大学政経学部兼任講師、経済学修士、
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、
国際金融情報番組『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・STOCKVOICE)キャスター。
『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE)キャスター。
マイナビ「鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説」、日経電子版、
日経QUICK等に経済コラムを連載。
地上波初の株式市況中継TV番組でキャスターを務めるほか、TOKYO-FM、
ラジオNIKKEIなどラジオ番組にも出演。
JazzEMPアンバサダー・メインMC。
総合芸術舞台『一粒萬倍 A SEED』アンバサダー・語り役。
パーソナルカラリスト。
☆ エッセイ【吉日のおかわり(五感で潤すオフ活のススメ)】
主な著書
『株式投資・新NISA 損をしない投資に大切な基本100』(アルソス刊)
『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)
『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)
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