人生いろいろ、令和に息づく戦わないしなやかさ
2026/07/18
【マイライフ〜人生観とライフデザインの交差点〜】Vol.6
人生いろいろ、令和に息づく戦わないしなやかさ
変化の激しいこの社会で、若い世代の結婚や子育てに対する価値観が多様化している。
マイナビが2026年1月に発表した「結婚観・子どもに対する意識調査」は、若者たちのシビアな本音を鮮烈に可視化した。
20代正社員の約5人に1人(20%)、30代にいたっては約3人に1人(約33%)が「結婚したくない」と回答したのだ。
その理由のトップに並んだのは、「結婚=幸せだとは思っていない」「自由な時間がなくなるから」という言葉。
かつては「人生の通過点」として自明の理であった結婚が、今や「自分の時間や自由という、かけがえのない人生の要素を差し出すもの」として、冷静に見つめ直されている。
このパラダイムシフトは、出産や育児に対しても同様だ。
こども家庭庁が実施した意識調査(2024年7月)では、「子どもを持つことは自然なことである」と答えた人が48.9%とついに半数を割り込み、女性の「子どもは持ちたくない」という回答は12.3%に達した。
さらに国の基幹調査である国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」を紐解いても、独身の若者が子育てへの障害として挙げる理由において、従来の「経済的理由」に加え、「自分の仕事(キャリア)に差し支える」「育児の心理的・肉体的負担に耐えられない」という項目が目立つようになってきている。
これらアンケートの調査結果を、私自身が専門的に精査したわけではない。
それでも、身近な声に耳を傾けていると、肌感覚としてこの大きなうねりはリアルに伝わってくる。
令和を生きる彼らは決して「怠惰」になったわけでも、「冷淡」になったわけでもない。
SNSを通じて先輩世代のリアルを丁寧に予習し、あらかじめ痛みを回避しようとする生存戦略の結果が、こうした調査に示されているのだろう。
ふり返れば、世の中の空気感がワーママに対して、「無邪気な羨望」から「過酷な日々」へとシフトしていった背景には、いくつかの転換点があった。
2010年代前後は、まさに羨望の「絶頂期」だったと言える。
国が「女性活躍推進」を掲げ、女性誌などには「仕事も、素敵な夫も、可愛い子どもも、すべてを手に入れた完璧な女性」としてのロールモデルが溢れていた。
「大変そうだけれど、私もああなりたい…」。
若い世代がそんなふうに、まっすぐな憧れを抱けた時代だった。
潮目が変わったのは、2016年から2018年頃。
最初の転換点となったのは、「リアルの可視化」である。
SNSの普及によって、メディアが作り上げた華やかなイメージの裏にある現実が、当事者たちの生々しい言葉でタイムラインに流れ始めた。
2016年の「保育園落ちた」ブログに端を発した待機児童問題、さらには「マミートラック」や「ワンオペ育児」といった、名付けようのなかった息苦しさの言語化。
それらは、「すべてを手に入れた」と語られてきた女性たちが、実際には「すべての負担を一人で背負わされていた」という一面も白日の下に晒した。
「バリキャリのワーママは、もしかして、自分には過酷な挑戦なのではないだろうか」。
若者たちの胸に、そんな予感の種が蒔かれたのだ。
そして、その予感を増強したのが、2020年以降の「コロナ禍」だった。
在宅勤務のPCに向かいながら、休校・休園になった子どもの世話をし、三食の用意を一人でこなすという日常。
24時間休むことなく役割に追われ続けるワーママの姿は、「憧れの対象」から「過酷なライフスタイル」の象徴として見る向きが増えてきた。
そうして迎えた2026年の、今。
若者たち全員が、一方向に向かい、同じ選択をしているわけではない。
様々な選択肢がある中で、自分の時間、精神的な平穏、心地よいパートナーシップなど、無理のない等身大のサイズでそれらを大切にし、「トータルの幸福度」を基準にして、新たな幸せの形を望む層が生まれている。
自分にとって負荷を背負って戦う生き方だけでなく、自分のキャパシティを見極め、余白を大切にする「戦わないしなやかさ」。
時代の価値観が多様化する中で、その軽やかな生き方に、静かな憧れの視線が注がれ始めているようだ。
もちろん、人生の正解はひとつではない。
これまでに存在したロールモデルを愛し、全力で駆け抜ける生き方はとても尊い。
昭和生まれの私から見れば、それは紛れもなく、心からのリスペクトの対象だ。
一方で、自らのキャパシティを見極め、余白を愛して等身大に進む生き方もまた、等しく尊い選択である。
張り詰めたパラダイムの枠を超え、それぞれが望む人生を、それぞれの形で堂々と体現していける社会へ。
誰もが「自分が納得できるマイライフ」を信じて一歩を踏み出せたとき、この国を覆う息苦しさは静かに薄らぎ、一人ひとりの足元へ、温かい光が射し込むのだろう。
綴り手:鈴木ともみ
キャスター・エッセイスト

【プロフィール】
国士舘大学政経学部兼任講師、経済学修士、
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、
国際金融情報番組『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・STOCKVOICE)キャスター。
『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE)キャスター。
マイナビ「鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説」、日経電子版、
日経QUICK等に経済コラムを連載。
地上波初の株式市況中継TV番組でキャスターを務めるほか、TOKYO-FM、
ラジオNIKKEIなどラジオ番組にも出演。
JazzEMPアンバサダー・メインMC。
総合芸術舞台『一粒萬倍 A SEED』アンバサダー・語り役。
パーソナルカラリスト。
☆ エッセイ【吉日のおかわり(五感で潤すオフ活のススメ)】
主な著書
『株式投資・新NISA 損をしない投資に大切な基本100』(アルソス刊)
『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)
『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)
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