ライフデザインにおける中庸の最適地と、ウェルビーイングの地図
2026/07/11
ライフデザインにおける中庸の最適地と、ウェルビーイングの地図
資産形成において、老後やセカンドライフの人生設計・ライフデザインを考えるとき、「ダウンサイジング」という選択肢が浮かび上がってくる。
これは、決して我慢をして生活の質を落とすということではない。
無理なく自分らしい暮らしを続けながら、固定費や余分なコストを賢く抑えるための一つの知恵である。
そして、そのコストを考える上で、筆頭に挙げられる項目は、やはり「住居費」になるのだろう。
そうした中、住居費を都心よりも低く抑えつつ、豊かな時間を手に入れる住まい選びとして、「地方移住」や「郊外暮らし」がセカンドライフの選択肢の一つとして定着しつつある。
資産形成を終えた世代向けのリサーチに特化したフィンウェル研究所が発表した『60代の実像:生活満足度、地方都市移住の実態、資産の取り崩し、70代のイメージ、新NISAの活用状況 「60代6000人の声」アンケート調査2024』(2024年3月)によれば、大変興味深いデータが示されている。
それによると、三大都市圏居住の5.6人に1人が移住を検討中、あるいは検討したことがあり、実際に移住した人の4分の3が「移住して良かった」と回答。
その理由として、半数の人が「生活費の削減」を挙げているのだ。
※フィンウェル研究所 https://www.finwell.co.jp/
このリアルな数字は、私自身にとっても非常に示唆に富むものだった。
なぜなら私自身も、いずれ迎えるセカンドライフにおいて、都心を離れた場所でのデュアル生活(二拠点居住)、そしてその先にある移住のグラデーションを、静かにイメージしているからだ。
新たな拠点、その移住先としての候補は、いわゆる「トカイナカ(都会と田舎の中庸)」と呼ばれる地である。
一般的な認知において、トカイナカとはただの「のどかな郊外」という大まかなイメージで片付けられがちかもしれない。
だが、私自身が予定しているピンポイントのエリアに絞って、その環境の要素を丁寧に紐解いていくと、「ウェルビーイングの地図」を静かに描くことができた。
実家のあるその地は、都心まで直通電車で約40分。
少し歩けば緑豊かな木立ちが広がり、コンビニも徒歩圏内。
自転車を8分も走らせれば、日常を支えるスーパーだけでなく、コンサートホールなどの文化施設にも手が届く。
さらに、信頼できる医療機関も複数点在している。
なのに、若い頃の私にとって、この風景はどこか「中途半端」に映っていた。
刺激を過剰に欲していた若き日は、眠らない都会の喧騒こそが世界の中心だと信じて疑わなかったし、あるいは逆に、圧倒的な大自然の中に身を置くような極端な「非日常」に憧れたこともある。
「便利だけれど、どこかのどかすぎる」
そんな身勝手な理由で、私はこの場所が持つ本当の価値を、随分と低く見積もっていた気がする。
けれど、年齢と経験を積み上げ、自分にとっての様々な「最適解」を探求してきた今の私には、全く別の思いが湧き出てくる。
ここは、中途半端なのではない。
都会の利便性と、自然がもたらす静謐さが、絶妙なバランスで溶け合う「トカイナカ」という名の中庸の最適地なのだと。
まず、日々の暮らしの土台となる「買い物」のポテンシャルに焦点を当ててみる。
徒歩や自転車の圏内に、日常を支えるスーパーや大型ドラッグストアが充実しているのはもちろんのこと、この拠点が持つ最大の特権は「東日本最大級のサービスエリア(S.A.)」を日常使いできるという点にある。
地方移住や郊外暮らしにおいて、時に見落とされがちな不便さがある。
それは、ふと欲しくなる洗練されたお惣菜や、トレンドのグルメを手に入れるために、わざわざ都心のデパ地下まで出向かなければならないという点だ。
だが、自転車を少し走らせた先にある巨大S.A.には、主要デパ地下と変わらない珠玉な食や最先端のトレンドが揃っている。
豊かな自然に抱かれながら、都会の洗練をいつでも「つまみ食い」できる贅沢。
これは、暮らしの満足度を大きく底上げしてくれる。
また、年齢を重ねるほどに重要性を増す「医療機関へのアクセスの良さ」も、この地の大きなディフェンス力だ。
いずれ車を手放した後の暮らしは、誰しもが不安を抱くもの。
多くの地方移住の失敗は、「自ら運転できなくなった瞬間に、通院難民になる」というリスクへの想像力不足から始まる。
しかし、この拠点ならば、近くのバス停から8分ほど揺られるだけで、駅前のクリニックモールにアクセスできる。
さらに、救急や精密検査に対応できる総合病院まではタクシーでわずか10分圏内。
普段の細やかな体調管理から、万が一の有事への備えまでが公共交通機関とわずかな移動で完結する地の利は、老後の不安を静かに消し去ってくれる。
そして最後は、私の人生を彩る上でどうしても譲れない「高い文化度」という要素だ。
ただ生活が便利なだけでなく、知性と身体を心地よく刺激してくれるひとときを欲してしまうのは、一種のサガなのかもしれない...。
だが、ありがたいことに、本格的な音響を誇る総合文化会館・コンサートホールもまた、自転車で8分ほどの場所にある。
年間プログラムを確認すると、わざわざ都心のホールまで遠出をしなくても、上質な音楽や舞台芸術の公演が日常的に開催されている。
これならば、人生の文化度を損なうことなく、心豊かな日々を送ることができそうだ。
【暮らしやすさ】【医療環境】【文化度】【都心へのアクセス】【豊かな緑】
私のセカンドライフにおいて、どれひとつとして削除することのできない5つのピース。
それらが絶妙なバランスで配置されている実家の環境と真剣に向き合ったとき、それは私にとって、何よりも心強い人生の羅針盤となった。
冷静に分析すればするほど、いずれ訪れるその暮らしへの愛おしさが、胸の奥からじんわりと溢れてくる。
もちろん、新しい暮らしが、絵空事のような平坦な光だけで満ちているわけではないことも心得ている。
現実の輪郭には、都心とは別の人間関係のグラデーションや、予測できない暮らしのリスクも潜んでいるのだろう。
それらすべても静かに引き受けながら、手に入れるべき理想の地図を、これからも優しく広げていこうと思う。
自らのライフデザインを、単なる時間軸の計画としてではなく、具体的な「絵」として人生の地図に落とし込んでみる。
そうすることで初めて、数字の計算だけでは見えてこない、自分にとっての真の「最適解」が導き出せるのではないだろうか。
綴り手:鈴木ともみ
キャスター・エッセイスト

【プロフィール】
国士舘大学政経学部兼任講師、経済学修士、
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、日本記者クラブ会員記者、
国際金融情報番組『WORLD MARKETZ』(東京MXテレビ・STOCKVOICE)キャスター。
『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE)キャスター。
マイナビ「鈴木ともみのわかりやすい経済ニュース解説」、日経電子版、
日経QUICK等に経済コラムを連載。
地上波初の株式市況中継TV番組でキャスターを務めるほか、TOKYO-FM、
ラジオNIKKEIなどラジオ番組にも出演。
JazzEMPアンバサダー・メインMC。
総合芸術舞台『一粒萬倍 A SEED』アンバサダー・語り役。
パーソナルカラリスト。
☆ エッセイ【吉日のおかわり(五感で潤すオフ活のススメ)】
主な著書
『株式投資・新NISA 損をしない投資に大切な基本100』(アルソス刊)
『資産寿命を延ばす逆算力』(シャスタインターナショナル刊)
『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)
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