老後の資産管理のリスクを考える
2026/05/05
老後の資産管理のリスクを考える
4月の朝日新聞の特集で「認知症の人と資産」というテーマが取り上げられていました。
非常に重要な内容だと感じたため、今回は「自分の親」そして「自分自身の老後」における資産管理について考えてみたいと思います。
私事になりますが、父は87歳で他界し、現在は92歳の母が実家で一人暮らしをしています。
父は85歳頃から徐々に物忘れが増え、毎朝電話がかかってくるようになりました。やがて症状が進み、医師の診断によりアルツハイマー型認知症と判明しました。その後、家族の認識も徐々に難しくなっていきました。
この段階で問題になるのが「資産管理」です。
金融機関は本人の判断能力が低下したと判断すると、資産保護の観点から口座を実質的に凍結することになります。こうなると、預金があっても介護費や生活費を自由に使えないという事態に陥ります。
我が家の場合は、母が家計を管理していたため何とか対応できましたが、本来であれば「認知症と診断される前」に対策を講じておくべきでした。
相続対策はよく話題になりますが、それは亡くなった後の話です。
まず重要なのは、「生きている間の資産をどう守り、どう使うか」という視点です。
そこで、認知症対策として検討の選択肢となる主な制度を整理してみます。
まず一つ目は、金融機関の代理人制度や家族カードです。
元気なうちに子どもを代理人として登録しておくことで、日常的な出し入れが可能になります。手続きが比較的簡単な点はメリットですが、金融機関ごとに運用が異なり、認知症発症後に制限される場合もあるため注意が必要です。
二つ目は家族信託です。
信頼できる家族と契約を結び、将来判断能力が低下した際に資産管理を任せる仕組みです。介護費の支払いだけでなく、不動産の管理・売却など柔軟に対応できる点が大きな特徴です。一方で、契約設計や運用の質が重要になるため、関わる専門家の選定が非常に重要です。
三つ目は任意後見制度です。
判断能力があるうちに、将来の後見人を自ら決めて契約しておく制度です。希望する人に任せられる点は安心ですが、実際に制度が発動すると後見監督人への報告義務などが発生し、手続き負担が大きくなることがあります。
そして最後が、法定後見制度です。
認知症発症後に家庭裁判所へ申し立てを行い、後見人を選任してもらう仕組みです。ただし、時間や費用がかかるうえ、必ずしも家族が選ばれるとは限らない点は押さえておく必要があります。
こうした制度を考える前提として、まず大切なのは「家族で資産の棚卸をすること」です。しかし実際には、お金や病気、死後の話は切り出しにくく、先送りされがちです。また、家族関係が複雑な場合や疎遠な親族がいる場合には、話し合い自体が難航することも少なくありません。それでも、不動産や一定の資産があるご家庭ほど、事前の整理をしておかないと将来的なトラブルにつながる可能性が高くなります。
私自身の考えとして、「家族で支えていく」という前提であれば、柔軟性の高い家族信託の活用は非常に有効な選択肢だと感じています。まだ新しい仕組みのため認知度は高くありませんが、実務的には最も現実に即した対応が可能です。
また近年は、高齢者を狙った詐欺も増加しています。警察官を装った訪問や不要なリフォームの勧誘など、手口は年々巧妙化しています。
こうしたリスクも踏まえると、「判断能力があるうちに準備しておくこと」の重要性は、ますます高まっています。
帰省のタイミングは、家族で落ち着いて話をする良い機会です。健康状態の確認とあわせて、今後の資産管理について一度話題にしてみてはいかがでしょうか。
将来の安心は、今の小さな一歩から始まります。
ファイナンシャル・プランナー 大木 豊
★お知らせ★
5月23日(土)の 岩槻セミナーは、
民事信託相談センター代表理事の本間弘一氏を講師にお迎えし、
家族信託についてお話しします。
執筆者: 大木豊
ファイナンシャル・プランナー

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