人生100年時代のライフプラン講座・第2回 (後編)
2024/12/04
人生100年時代シリーズ(ライフプラン講座)
第2 回目は教育資金について。前編では今の日本で子どもの教育にどれくらいのお金をかけているのか、データをご紹介しました。
後編では、教育資金の準備方法について、基本的な考え方をまとめました。
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高騰する教育費、準備は長期で計画的に(後編)
2.教育資金の準備方法について
〇大学にはいくら必要?
一般に教育費のピークは大学に通う時期です。特に入学時にはまとまった金額が必要になります。国立大学でも入学時には入学金と前期の授業料の合計で約55万円を納付しなければなりません。
大学に納める費用は、大学や学部によって大きな違いがあります。また、推薦やAOなど入学試験のタイプによって合格が決まる時期、つまり資金が必要となる時期も様々ですので、お子様の進路が決まったら、事前に確認しておく必要があります。
さらに、自宅から通えない場合は住まいの家賃や生活必需品の購入など、学費以外の出費もあります。大都市圏では家賃をはじめ生活コストが非常に高いので、学費と生活費を合わせた4年間トータルの費用は平均で1,000万円前後にのぼります。自宅を離れて進学する可能性があれば、教育費の負担は一段と重くなります。
※前編の表2、表3をご参照ください。
〇教育資金づくりの考え方
教育資金づくりの基本は、大学に進学する18歳までに、大学4年間に必要な金額を目標として、コツコツと積み立てていくことです。
高校までの間は、日常の家計の中から教育費を支出しているご家庭が多いのではないでしょうか。小・中学校は義務教育なので公立なら授業料は無料、幼稚園・保育園と高校の授業料も無償化が進んでいます。しかし、授業料以外に教材や制服にもお金がかかりますし、習い事や塾の月謝もバカになりません。教育費は惜しまないとは言っても、どれくらいの金額をかけることが妥当なのか、家計のバランスをしっかり検討してください。
今すぐ必要な教育関連の出費も多い中、将来の大学進学のための積立資金はどのように捻出したらよいでしょうか。
まず活用したいのが児童手当です。子どもが生まれると、3歳未満は月額1万5,000円、3歳から高校を卒業するまでの間は月額1万円の児童手当(対象となる子どもが1人の場合)が出ます。児童手当を使わずにそのまま積み立てに回せば、高校卒業までに234万円の資金をつくることができます。仮に、児童手当に上乗せして毎月3万円を18年間積み立てると、648万円になります。私立大学・文系の4年間の平均費用が約690万円というデータがあるので、これくらいが一つの目安ではないかと思われます。
2024年10月から児童手当が拡充されました(12月支給分から)。従来は中学卒業までだった支給期間が高校卒業まで延長され、保護者の所得制限が撤廃されました。制度上子どもの数にカウントする年齢も22歳の年度末までに引き上げられ、第3子以降は月額3万円が支給されます。新たに支給対象となった方や支給金額が増える方は申請が必要ですので、お住まいの市区町村のHPを確認してください。
(参考)児童手当拡充に関するさいたま市のページ
https://www.city.saitama.lg.jp/007/001/003/p017220.html
〇教育資金の積立方法
積立の方法は、学資保険、積立預金、NISAを利用した投資信託の積立など色々ありますが、教育資金に関しては増やすことよりも確実に貯めることが大事と考えます。まず、利便性の良い銀行で淡々と積み立てていくことを考えましょう。
学資保険は、契約者に万一のことがあった場合に満期金はそのままで保険料払い込みが免除されるという保険機能付きの積立商品です。低金利下では貯蓄としての魅力はないうえ、原則として満期まで解約しない前提です。換金が難しいことは通常はデメリットですが、教育資金の場合は手を付けにくいことが逆にメリットとも言えます。
非課税メリットを活用するという視点では、iDeCoが老後資金目的であるのに対して、換金時期に制限のないNISAは教育資金にも向いていると言われています。しかし、NISAの対象である株式投資信託は値動きのある商品です。10年以上の長期で見ると右肩上がりであっても、資金が必要な時期に運悪く急落してしまってはせっかくの積立が台無しになってしまいます。必要な時期と金額が決まっている教育資金の積立には、一般的にはおすすめできません。
〇どうしても足りないときは…
大学進学時期になってどうしても資金が不足する場合は、奨学金や教育ローンの利用も選択肢となります。これらは手続きを行う時期やお金が出る時期が決まっていますので、お子さんが高校に入学したら念のため確認しておくとよいでしょう。
教育ローンは保護者の借入れですが、貸与型の奨学金は子ども本人の借金です。社会に出る時点で借金を背負ってしまうことになるので、利用するときはお子さんとよく話し合ってください。
(参考)
・日本政策金融公庫(国の教育ローン)
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html
・独立行政法人日本学生支援機構(奨学金)
よく知られている日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、貸与型(利子あり・なし)のほかに返済が必要ない給付型もあります。高校在学中に学校を通して予約できる枠もありますので、学校からのお知らせには注意しましょう。
その他、大学ごとの授業料減免制度や企業・団体の給付型奨学金制度もあります。成績要件などお子さん自身の努力が求められるため、勉学のモチベーションになるかもしれません。進路と合わせてお子さん自身が考えられるよう情報提供してあげるといいと思います。
おじいちゃん・おばあちゃんに経済的余裕があるご家庭では、援助してもらうという手もあります。祖父母が孫に教育資金を一括贈与する場合、1,500万円まで贈与税がかかりません(2026年3月までの時限措置)。贈与した資金は金融機関に預けて所定の手続きに則って支出していく必要があります。ただし、後に相続が発生したときに相続人の間でトラブルのタネになる可能性もありますから、制度を利用する際は家族でよく話し合い、専門家に相談することをおすすめします。
(参考)
・教祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/01.htm
〇まとめ
教育資金は、お子さんが生まれた時点で必要な時期が予想できるので、計画的に貯めていくことができます。しかし、子育ての時期は住宅ローン返済期間と重なり、家計が苦しく、,貯蓄を継続していくことは容易ではありません。
ライフプランを作成し、長期的な収支のシミュレーションを行うと、教育資金も含めて家計全体としていつ、どれくらいの資金があればよいのか、大まかに把握することができます。教育資金だけにとらわれず、長期的な視点でバランスの良い資金配分と効率的かつ柔軟な資金計画を立てましょう。
ファイナンシャル・プランナー 松岡佳也
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