人生100年時代のライフプラン講座・第11回
2025/08/11
人生100年時代シリーズ(ライフプラン講座)
「終活と相続を考える ~想いをかたちに~」
「終活」とは、人生の終わりに向けて静かに心を整える準備です。けれど本当は、“これまで”を振り返り、“これから”を思いやる、とても前向きな時間でもあります。
そして「相続」は、家族への感謝や願いを“かたち”にして届ける大切な時であり手段です。財産の分け方を決めることで、遺された人たちに感謝を伝え、争いを防ぐことができます。
終活と相続は、自分らしい人生のしめくくりとして、家族に贈る最後の思いやり。
今こそ、安心と愛情を未来につなぐ一歩を踏み出してみませんか。
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1.終活 × 相続とは――“想い”を次世代へ手渡す前向きな営み
終活は、身辺の整理や死後の手続きを整えるだけではありません。これからの人生をどう生きるかを前向きに考え、自分らしい生活を送るための準備です。準備が進むと不安が軽くなり、日々の満足度や幸福感が高まると言われています。
一方、相続は、財産を次世代へと引き継ぐことです。その財産にはあなたが前の世代から受け継いだ価値観やあなた自身の想いが込められているはずです。あなたの価値観や想いを言葉にして伝えることで、財産とともに家族の絆と心の拠り所が受け継がれます。
終活を進める中であなたの想いを整理し、何をどのように遺したいのかを明確にしたうえで、相続の準備をしましょう。
2.相続準備のポイント
相続は自分が亡くなった後のことになるため、どんなに準備をしても確実に自分の意思通り物事が進むかどうかはわかりません。ただ、家族が円満に財産を引き継いでいくケースとトラブルに発展するケースには、ぞれぞれ共通点があります。
◆円満・円滑な相続の共通点
●早めの準備と思いやりの言語化:エンディングノートや遺言書の付言事項(ふげんじこう)には法的な効力はありませんが、家族への感謝やあなたの希望を言葉にして遺すことができます。遺言書で財産の分け方を指定する場合、その理由を感謝の気持ちとともに記しておくと、受け取る相続人の間に納得感が生まれ、争いを避けやすくなります。
●家族との対話:文面に遺すだけでなく、元気なうちから家族とよく話をし、延命治療や亡くなった後についての希望を共有しておくと、いざという時に家族の迷いが減り、決断や合意の助けになります。
●専門家の伴走:相続には法律や税務が絡み、登記などの手続きが煩雑なため、相続分野に強い専門家のアドバイスを受けながら準備しておくと、家族の負担を軽減することができます。
◆相続トラブルに共通する要素
●遺言がなく財産情報が不明:亡くなった人の財産をすべて洗い出す作業は想像以上に大変です。どの金融機関に口座があるかわからない、不動産の名義がどうなっているのか不明、もしかしたら負債があるかもしれない等、情報がないことが残された家族の負担と対立を招きます。 最近はネット銀行、ネット証券などの口座も増えており、何の手掛かりもなしに本人以外が調べることは非常に困難です。
●話し合いの先送り:葬儀・医療・住まいなどに対する希望をはっきり伝えていないと、家族が判断に困ります。それぞれの推測や思い込みが衝突の原因となります。
●納税資金の不足:財産はあってもすぐに換金できない場合、相続税の納付や名義変更に必要な現金を確保できず、手続きが滞ることがあります。事前設計がカギです。
3.今日から動ける「実践7ステップ」
Step1 紙1枚から始める見える化
メモ用紙で構いません。財産の一覧と自分しか知らない大事なことを書き出しておきましょう。
①預貯金・証券・不動産・保険・負債のざっくり一覧(ネット口座も忘れずに)
②重要書類の保管場所
③家族および親しい人の連絡先
④デジタル資産(SNSなど)のアカウント
どこに口座やアカウントがあるのかが分かるようにしておくことが第一歩です。
Step2 エンディングノートへの記入
初めから完璧に記入しようと思うと挫折しがちです。書きやすいところから、思いつくままに書き込んでいきましょう。
財産目録などは後にして、まず医療・介護・葬儀・お墓の希望や、家族や友人へのメッセージを考えてみるのがおすすめです。
エンディングノートに法的効力はありませんが、最も“想い”が伝わりやすい道具です。重要なものの保管場所やパスワード等の機密情報は直接書かず、別紙保管にします。
Step3 家族と10分対話
家族全員を集めて改まった場を設けようとすると、なかなか言い出しにくく先送りしてしまいます。テレビ番組や他家の事例をきっかけに、軽い雑談から。「延命治療は?」「実家はどうする?」など1テーマでOK。日常の場で機会を見つけて、自分の希望や考えを伝えるように心がけてみてはいかがでしょうか。
Step4 遺言書の方針づくり
誰に何を託すかの骨子を決めます。配分の理由や感謝の気持ちは付言事項で温かく伝えるのがコツ。せっかく遺言書を作成しても、家族がその存在を知らなければ意味がありません。保管場所によっては書きかえられたり意図的に隠されたりする恐れもあります。内容が固まったら、公正証書化や遺言執行者の指定も検討しましょう。
Step5 デジタル終活
パソコンやスマートフォンの中身を整理します。中には、家族に見られたくないものもあるでしょう。オンライン・オフラインのデータをリスト化し、「残す/削除」を仕分けします。パスワードは直接書かずヒント方式にするなど、漏えいに配慮してください。
Step6 葬儀やお墓の希望
家族の負担軽減のため、葬儀やお墓をどうしてほしいかを考えます。葬儀やお墓は遺された人のためのものなので、家族の考えも聞いてみる必要があります。お墓の承継者がいない場合は永代供養も選択肢となります。明確な希望がある場合は生前に契約しておくとよいでしょう。
Step7 ライフプラン(資金計画)の作成
介護や死後のこと、相続に対する自分の考えが整理できたら、それを実現できるように、これからの資金計画を立てましょう。相続対策の前に、まず自分のための資金を確保することが大切です。資金計画ができたら、高齢になっても管理しやすい形に徐々に資産を組み替えていきます。判断能力が衰えたり、外出が困難になったりすることも想定しておくべきです。
自分ひとりでライフプランを作成するのは難しいと思う方は、専門家(ファイナンシャル・プランナー)に相談することをおすすめします。
4.“守る・渡す・育てる”承継設計
相続においては、自分の財産と想いを整理して家族にそれを伝えておくことが大切であることをご説明してきました。相続財産の使途について自分の価値観を引き継いでほしいのであれば、「教育資金に」「地域への貢献のために」など希望を言葉にして伝えるとよいでしょう。遺言書の付言事項や家族信託契約の信託条項に記載することで、理念の継承ができます。
もう一つ、資産をできるだけ減らさず有効に活用できるように準備しておくことも大切です。財産の一覧表を作成して全体を把握できたら、分配のしやすさや納税資金を考慮しながら、資産の組み換えを検討しましょう。
●相続税の納税資金の準備:相続税がかかると予想される場合は、納税資金を現金で確保しておく必要があります。生命保険は受取人を指定でき、非課税枠もあるため、納税資金の準備に適しています。
●資産の器づくり:不動産や有価証券が多い場合は、家族信託の契約や資産管理会社の設立など、万一判断能力が衰えても資産を凍結されず管理しやすい形を考えておきましょう。ただし、手間も費用もかかるため、家族でよく話し合い、専門家のアドバイスを受けながらあなたの家族に適した形をしっかり検討してください。
5.まとめ――言葉と対策で想いを形にする
終活を通じて自分の財産と想いを整理し、それらを法律に則った形や仕組みに整えて次世代に渡してつないでいくのが相続です。
人が亡くなれば相続が発生します。なにも準備されていなかったために、財産を把握するのに家族が苦労したり、分けられない資産をめぐって家族が争ったりすることを望んではいないはずです。相続を意識し始めたら、資産を家族が管理しやすく受取りやすい形に変えていくことが大切です。さらに、その資産にあなたがどんな想いを込めて渡そうとしているのか、言葉を添えてつないでいきましょう。
☑ 言葉で“想い”を可視化する(エンディングノート・付言事項)
☑ 法律に担保された適切な形で確実に資産を渡す(遺言書、生前贈与、家族信託、納税対策など)
この二つが両輪となって、あなたの価値観や想いがこもった相続財産が次の世代へと引き継がれていきます。準備には時間がかかります。今日からできること、日常の中の少しの対話を意識することから始めましょう。
<執筆者> 松岡佳也(まつおか・よしや)
ファイナンシャル・プランナー

約20年前、銀行で投資信託を購入して投資デビュー。
以来、資産の上下で一喜一憂も継続中。
若者の人生に寄り添いたいと日々奮闘している。
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