分断と不確実性の中で築く“個人の未来戦略”(前編)
2025/06/25
国家に頼れぬ時代を生きる
分断と不確実性の中で築く“個人の未来戦略”
(前編)
世界秩序が揺らぎ、価値観が分断されるなか、私たちは“国家が未来を保証してくれる時代”の終わりを迎えています。必要なのは、変化を見抜く力と、自らの意志で未来を設計する力です。
トランプ再登場から半年弱が経ち、世界はさらに「不確実性」を露呈し変化の度合いがますます加速しています。今回は現状を整理し、次回で新しい時代の「ファイナンシャル・プランニング」に言及してみたいと思います。
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多極化する世界秩序と戦略的混迷
~トランプ再登場、動揺する国際社会~
2025年1月、ドナルド・トランプが第47代米国大統領として返り咲いたその日、スイス・ダボスでは各国の指導者たちがグローバル協調の継続を模索していました。しかし、トランプは再び“アメリカ・ファースト”を高らかに宣言し、同盟や多国間協調への冷淡さを露わにしました。かつてのリベラルな国際秩序はもはや幻想となり、世界は明確に“ポスト・アメリカ”の時代に突入しつつあるようです。
海外からのニュースを見ると、米国では、経済格差や中間層の疲弊を背景に、排外主義・孤立主義が政治を駆動し続けています。債券運用の世界的大手PIMCOが発表した「Secular Outlook 2024-2028」は、米国の中期的に2%未満の成長率、構造的なインフレ圧力、政策手詰まりによる金利の高止まりという“三重苦”を指摘して、構造的なインフレと成長鈍化の“停滞型世界”が続くと予測しています。
一方、国際社会では地域紛争と資源・宗教・価値観を巡る対立が再燃し、ロシア・ウクライナ戦争は停戦の兆しが見えぬまま長期化し、ウクライナの疲弊とNATO諸国の支援疲れが顕在化。ロシアは欧米との対立を深化させながらも、エネルギー輸出先をアジア・中東にシフトし、中国・インドとの関係強化を進めることで「ユーラシア経済圏」の中核を目指しています。さらにロシアは金融システムの脱SWIFT化(※)、金・人民元建て貿易の拡大などを通じて、脱ドル経済の現実化に動いています。
(※):アメリカ主導の国際金融ネットワークから離脱し、制裁リスクを回避しつつ、自国主導の決済システムを確立しようとする地政学的・戦略的な動き
中東においても緊張が高まっています。2025年春、イスラエルとイランの間で軍事衝突が表面化し、ペルシャ湾の原油輸送に大きな影響を及ぼし、イランの核開発とイスラエルの先制攻撃によって一触即発の状態となりました。これにより原油価格は急騰し、エネルギー価格の上昇とそれに伴う世界的なインフレ懸念が広がりました。中東リスクは、サウジアラビアやUAEを含むアラブ諸国の地政学的位置付けを再定義し、米中露の介入が複雑化する地域覇権争いの焦点となっています。
こうした中、アジアの役割が拡大しています。中国は引き続き「一帯一路」を軸にユーラシア経済圏の再編を主導し、ロシア・中東・アフリカとの経済連携を強化。インドは人口の若年化、IT技術力、戦略的中立外交を武器に存在感を高め、ASEAN諸国も域内連携を進めながら年4~5%の成長を維持し、“一極集中”ではなく“多地域連携”という新たな安定モデルを形成しつつあります。
世界はいま、グローバルな協調から地政学的ブロックへの再編へと向かっているようです。前述のPIMCOも、経済の分断は資本の移動を阻害し、ボラティリティの高い金融市場が常態化する未来を予測しています。
このような世界情勢において、日本は相対的に脆弱な位置にあります。経済規模の相対的縮小、深刻な人口減少、財政赤字の常態化、そして依然として強い対米依存。これらの複合的な要素が外的ショックに対して日本を極めて脆弱な立場に置いています。
トランプ再登場は、時代の象徴にすぎません。真に問われているのは、「誰の秩序の中で、誰の価値観で、誰の経済圏とつながるのか」という、日本と世界が直面する根源的な問いです。変わりゆく世界で、国家はもはや“未来の保証人”ではありません。未来を切り開くのは、私たち一人ひとりの主体的な選択と行動なのです。
※後編ではこの時代のファイナンシャル・プランニングについて考えてみます。
CFP 井上 昇
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