不確実な未来を守るための戦略とファイナンシャル・プランニング⑤ 第4章
2025/05/04
新たな挑戦、新たな機会「変動する時代に備える」
不確実な未来を守るための戦略とファイナンシャル・プランニング④
第4章:ファイナンシャル・プランニングの実践と日本の政策
第3章では、私たち一人ひとりが変化の中で未来を切り開くことの重要性を強調しました。自分自身の力を信じ、一歩一歩を踏み出すことで、新たな時代を迎える準備ができるのです。では、実際にどのように行動していくか、そしてその行動がどのように日本社会に影響を与え、さらには世界における日本の立ち位置をどのように再構築していくべきかを探ってみます。
未来を予測することは不可能ですが、そのために備えることはできます。国家や企業は、もはや無条件に私たちを守る存在ではありません。私たち一人ひとりが、自らの未来を切り開く“覚悟”を持つ時が来ているのです。
では、私たちは何から始めればいいのか?それは個々人がファイナンシャル・プランニングという手法を使って、自分の“ライフプラン(=資金計画)”を作成することから始まります。人生の資金計画を立て、計画を実行して生活をより豊かにすることから始まります。
1.“ライフプラン(=資金計画)”の作成
この激動(不確実で変化の速い)時代、資金計画には、重きを置くべき点が多々あります。一番大切なのは「資産分散」です。資産のリスクを分散させ、未来に備えるために、資産をどこにどの様に置くかという資産の置場を明確にすることだと思います。「アメリカ第一」は各国の分断を招きますが、逆に資産のグローバル化はますます進展します。
不安定な政治経済の世界から金融環境に目を向けると、昨年から株式と債券は相関関係が回復(逆相関の関係へ戻る)しつつあり互いにリスクヘッジの役割を果すことが十分に可能な環境になり、資産の置き場所が資産形成の明暗をよりハッキリとさせるものです。資産の置き場所もふえますが環境の変化も早くその意味ではリスクも大きくなります。より適切な資産分散を徹底していく必要があります。
以下にリスクを分散するための資産別の特徴を箇条書きにしてみました。
・現預金(円):生活資金として一定額を保有。ただし、過剰に円資産を保有しすぎることはインフレリスクを高めるため、その管理には十分な注意が必要です。
・外貨建て資産:通貨リスクの分散として、米ドル、ユーロ、豪ドルなど、複数の通貨で資産を分けることが重要です。
・債券(国内外):株式との逆相関が回復しており、景気後退局面で安定的な収益源として重要な役割を果たします。
・金・コモディティ:インフレリスクや有事に備えるための無国籍資産。特に金は、保険的存在としての役割を強化しています。
・株式(国内外):世界経済の成長を取り込むための資産。ただし、過剰なリスクを避けるため、ディフェンシブセクターへの分散も考慮すべきです。
・不動産・代替資産:実物資産としての安定性を活かし、特に資産承継を意識する世代には、節税対策を踏まえた不動産活用が不可欠です。
※資金計画の全体像については最終章で詳しくお話しします。
2. 私たちの“社会に対する役割”の再構築
個人の“ライフプラン(=資金計画)”の作成は、自己のみならず次の世代、そして次々世代の未来を作り、そして守るための基盤作りです。しかし、これだけでは足りません。現在、世界は大きな変動を迎えており、特に日本はその影響を強く受けています。
上記の様に個人の視点からの対応に加えて社会的な視点も欠かせません。例えば、少子高齢化や経済のグローバル化の中で、私たちはどのように新しい形で社会貢献していくか、また企業や政府が提供するサービスを補完する形で自らの資産をいかに構築していくかが重要です。個人としては、資産の配置や経済活動の選択肢を広げることが、未来の不確実性に立ち向かうための重要な戦略となります。
一方、個人が備えるだけではなく、国家としても適切な政策を打ち出し、社会全体が未来に向けて強靭に生き抜くための道を築く必要があります。特に、国内と国外の動向を見据えた政策が求められます。以下に、日本が注力すべき政策を国内外の視点から整理します。
【国内政策】
①少子高齢化への対応
日本の少子高齢化は深刻な社会問題であり、これに対する政策は今後の日本社会の基盤を作る重要な要素です。社会保障制度の見直し、育児支援や高齢者の生活支援、そして働き方改革などが求められます。具体的には、働き方改革の一環として、柔軟な勤務形態やワークライフバランスを実現するための制度強化を図り、少子化対策としての育児休暇制度や経済的支援を充実させる。また、退職後の再就職支援と高齢者の活躍の場を創ることです。
②デジタル化とAI活用
世界のデジタル化の流れに遅れを取らないよう、国内でのデジタル基盤の強化と、AIやロボット技術の導入促進が急務です。これにより、労働力不足や生産性向上が期待できます。
具体的には、公共サービスのデジタル化を進め、教育や医療、福祉分野でのAI活用を推進する。さらに、企業がデジタル化を進めるための支援策や税制優遇を強化することが求められます。
③環境とエネルギー政策
気候変動への対応と持続可能なエネルギーの確保は、国際的にも大きな課題となっています。日本としても再生可能エネルギーへの転換と、エネルギー効率の向上を目指す政策を強化すべきです。具体的には再生可能エネルギーの普及促進、カーボンニュートラルに向けた法整備、エネルギー効率化技術への投資を進め、持続可能な社会の構築に向けた政策の実行です。
【国外政策】
①経済のグローバル化への適応
日本が国際社会で生き残るためには、他国との経済連携を深め、貿易や投資の自由化を進めることが必要です。特に、アジアを中心にした経済圏の拡大に向けた戦略を強化することが重要です。
具体策:TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(地域的な包括的経済連携)などの経済協定を積極的に推進し、アジアとの経済連携を強化します。さらに、自由貿易の推進を通じて、グローバル市場へのアクセスを拡大することが求められます。
②国際的な安全保障の強化
中国、ロシアをはじめとする地政学的なリスクが高まる中、日本の安全保障政策は重要な課題です。特に、アジアにおける政治的・軍事的な安定を維持するための取り組みが必要です。
具体策:日米同盟を強化も考えられますが、前章でもお話ししたようにリスクが高く、不安要素が拭えません。他の自由主義陣営との連携を深める等、確りとした検討が必須です。また、自衛隊の能力強化や、サイバーセキュリティ対策を強化することで、国際的な安全保障体制に貢献します。
③デジタル外交と国際規制の整備
世界各国でデジタル技術が急速に進化する中、日本はサイバー外交や国際的なデジタル規制の整備に積極的に関与する必要があります。これにより、国際的な競争力を高め、経済成長を促進することができます。
具体策:国際的なデジタル規制の策定に参画し、AIやデータ取引に関する国際基準を構築する。また、デジタルインフラの整備とセキュリティ強化を進めることで、国際的な競争優位を維持します。
<まとめ>
個人の“ライフプラン(=資金計画)”の作成は未来に備えるための第一歩です。しかし、国家としても、国内外の変動に対応した政策を打ち出し、社会全体が未来に向けて強く立ち向かう準備をすることが求められます。少子高齢化への対応やデジタル化の推進、環境問題への対応、そして国際的な経済連携の強化など、多岐にわたる政策を通じて、より持続可能で強靭な社会を作り上げていく必要があります。個人と社会が協力し合い、互いに支え合う未来を築いていくことが、私たちにとっての最も重要な課題であると確信します。
執筆者:井上 昇(ファイナンシャル・プランナー)
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